公開日 2021年04月01日
更新日 2021年04月21日
発掘情報 わじま
○大釜西法寺跡 発掘調査を終了しました
所在地 | 輪島市門前町大釜地内 | 調査期間 | 2020年10月から2021年3月 |
遺跡の性格 | 集落跡 | 主な時代 | 中世,近世 |
主な遺構 |
石垣,集石状遺構,柱穴,土坑,暗渠, |
主な遺物 |
珠洲焼,貿易陶磁器,陶磁器(中世から近世), |
この木柱を主体とした遺構が盛土により埋められ、建物基礎と考えられる集石状遺構がつくられるのが、次の段階(第2面,写真2)です。この時期に石垣(写真3)が築造され、厚さ70cm程の盛土がされます。この土木工事は、18世紀代に行われたと考えられます。
この生活面に、さらに盛土がされ、宅地が造成されました。この段階が最も新しい段階(第1面)と考えられ、現代まで続きます。一部の石垣は、この時期の造成によって埋没します。
今回の調査により、大釜地区の開発が中世には始まっていた可能性が高いことが、より明確になりました。また、近世の土地利用については、想像を超える規模の土木工事が行なわれていたことも分かりました。これらの背景には、西法寺と高爪山信仰に関連する集団の力があった可能性が想定されます。大釜地区に点在する遺跡群は、奥能登の信仰とそれに伴う開発とを位置づけることができる可能性を持つ貴重な遺跡と考えられます。
写真1 木柱の確認状況 写真2 第2面の全景
○大釜北集落遺跡 発掘調査を終了しました
所在地 | 輪島市門前町大釜地内 | 調査期間 | 2020年8月から10月 |
遺跡の性格 | 集落跡 | 主な時代 | 中世,近世 |
主な遺構 | 柱穴,土坑,盛土地業 | 主な遺物 | 土師皿,珠洲焼,陶磁器(中世から近世),石製品,砥石 |
今回の調査では、柱穴と土坑を確認しました。調査地点は北から続く丘陵の裾部を利用しており、この裾部を平坦に整地することで生活の場としていたことが分かりました。遺構のほとんどが、この平坦面で確認されており(写真1)、同じ場所を何度も生活の場として利用していたことが分かりました。柱穴には木柱が残っているもの(写真2)もあり、土坑の上面には礎石と考えられる石が据えてあるもの(写真3)もありました。
平坦面よりも東側は谷地形で、近世から近代に盛土され、広い平場として利用されたと考えられます。この平場からは近代以前の生活の痕跡が、ほとんど確認できませんでした。
調査地の北には、少なくとも近世には西法寺が建っていました。今回の調査で確認した生活の痕跡は、西法寺に関係する施設の可能性があり、中世から近世の寺院を核とした集落のあり方を示す貴重な情報と考えられます。
写真1 調査地全景 写真2 木柱の確認状況
写真3 礎石の確認状況
○本市上野遺跡 発掘調査を終了しました
所在地 | 輪島市門前町本市地内 | 調査期間 | 2020年10月から11月 |
遺跡の性格 | 集落跡か | 主な時代 | 古墳,古代 |
主な遺構 | 小穴,土坑,溝跡 | 主な遺物 | 土師器,須恵器 |
今回の調査は、幅1m×長さ120m程の狭小な範囲であったため、遺跡の詳細な性格を把握することはできませんでした。しかし、柱穴と考えられる小穴(写真1)や溝跡などが見つかり、古墳時代を主体とした遺物が出土しました。確認された遺構や遺物から、少なくとも古墳時代からは土地利用が始まったと考えられます。
調査地点は、近隣に25枚の和同開珎が発見された深田まえだ遺跡や古代の建物跡と緑釉陶器が見つかった百刈遺跡があり、櫛師郷の中心地と考えられている地域です。今回の調査で確認された古墳時代の土地利用の痕跡は、古代の拠点的集落の形成の前段階として重要な情報といえるでしょう。
写真1 小穴の確認状況 写真2 調査地点の全景
写真3 遺跡の遠景
○大釜3号塚跡 発掘調査を終了しました
所在地 | 輪島市門前町大釜地内 | 調査期間 | 2020年5月 |
遺跡の性格 | 塚跡 | 主な時代 | 近世 |
主な遺構 | 塚,土坑 | 主な遺物 | 陶磁器(近世) |
今回の調査では、塚跡とそれに伴う遺構群を確認しました。塚は、大釜1号塚跡の北西30m程の地点で、新たに発見されました。旧地形を利用し、削り整形した塚であることが分かりました。塚の裾部を中心に礫群がみられ、頂部には礫石(玉石)が集中する範囲が確認できました(写真1・2)。頂部の玉石下部には方形の土坑が見つかり、玉石が大量に充填された状況が確認できました(写真3)。
玉石は周辺の山に由来するものではなく、海や川に由来するものと考えられます。大釜内には、このような玉石が散乱する塚が3箇所確認されています。この玉石を運び、塚に置くという習俗は、高爪山信仰と結びつく信仰の形態の一つなのかもしれません。
写真1 塚跡の確認状況 写真2 塚頂部に玉石が集中する状況
写真3 土坑に玉石が充填された状況
○大釜1号塚跡 発掘調査を終了しました
所在地 | 輪島市門前町大釜地内 | 調査期間 | 2019年11月から2020年1月 |
遺跡の性格 | 塚跡 | 主な時代 | 中世,近世 |
主な遺構 | 塚,板碑,土坑 | 主な遺物 | 珠洲焼,陶磁器(中世から近世),石製品 |
今回の調査では、塚跡とそれに伴う遺構群を確認しました。塚は、旧地形を利用し、削り、整えることで構築されおり、その埋没状況から、2段階あることが分かりました。概ね第1段階(古段階)は中世から近世初頭、第2段階(新段階)は近世から近代の年代が想定されます。
古段階(写真1)は、塚を作り、南西裾部に板碑(写真2)、北東中腹部に五輪塔を建てた時期です。板碑は立石した状態で確認され、その背後には石で方形に区画した範囲が確認され、礫石(玉石)が堆積していました。さらに、この塚は、墓域としても利用されるようになったと考えられ、焼骨を納めた土坑が数多く見つかりました。
新段階(写真3)になると、塚には礫が乱雑に積み上げられ、板碑は埋没します。塚や板碑、五輪塔に対する信仰が薄れる段階とも考えられます。
近世の大釜村は、高爪山信仰の拠点集落の一つとも考えられています。この塚跡の変遷から、信仰の移り変わりが読み解ける可能性もあります。
写真1 古段階の塚跡の確認状況 写真2 板碑の出土状況
写真3 新段階の塚跡の確認状況